MARIE ANTOINETTE
2007年 02月 02日
でもきっと裏話が色々あったんだろうなとか、本当はそういう華やかなイメージとは違う人なのかもなとか、観る前に推測はしていたのですが、この映画はそういう型通りな私の考えをするりとかわして、全く別の価値観と切り口で描かれた作品でした。
14歳の少女が全てを捨てて他国の王室に嫁ぐのが、どれだけの事だったのかという事を型通りの説明を排して、極めて象徴的に、爽快なくらいの残酷さを込めて構成された内容に、ソフィア・コッポラ監督のセンスと知性を感じました。いわゆる「歴史もの」にありがちな荘厳さや、重みが全く無いのです。でも決して中身が無いわけではなく、シンプルにマリーの内面の葛藤も描いている。女性らしい、柔らかいバランス感覚だと思います。
それに寄与しているのが、現代的な音が散りばめられたサウンドトラック。NEW ORDERやTHE CURE、THE STROKES等々、どう考えても歴史ものにはそぐわない(笑)ピコピコ音楽を、極めてミスマッチながら溶け合わせてしまうセンス。
アートディレクターがSTROKESのPV監督で有名な、ロマン・コッポラ氏だったようですが、さすが同じ血をひいているのだなぁと、妙に納得させられました。
独特のセンスがつまったこの作品は好き嫌いが分かれると思います。歴史ものをこういう切り口で描くというのは私も観たことがなかったし、観終わってからしばらくはこの映画をどう評価していいのかわかりませんでした。でも、こういう映画もあるんだという体験をする事は、作品の評価に関わらず大変意味があるんじゃないかなと思います。
主役のキルティン・ダンストは雑誌のインタビュー(ELLE JAPON)で、ソフィアとは姉妹の様に全てが通じ合うと語っていましたが、本当にソフィア監督のイマジネーションそのままの、新しいマリーそのものに見えました。私の大好きな映画「インタビューウィズヴァンパイア」の天才子役(子供の体に、大人の女性が宿っているようでした)の頃から、かえって若返ったようなナチュラルさを感じました。
そして、やはりソフィア監督特有の、映像のリリカルな淡い美しさが何よりそれを惹きたてていました。言葉より映像が雄弁な映画は、現在は特に少ないと思います。
by aicoa
| 2007-02-02 22:25
| FILM