とうとう、先週土曜日に公開されたトワイライトサーガ最終章ブレーキングドーンの前編。
個人的に、向こうでの公開から四ヶ月も待たされた事もあり、観るまでに疲れた感(笑)があったのだけれどその分心の準備を持って(余計な情報は入れない努力はしたけれど、ある程度はやはり仕方なかったが)観ることができた気がする。
今日までに既に三回観たのだけれど、一貫した感想としては「トータル/ディテール美」が今までの同シリーズの作品群の中では際立っているような気がする。
もはや伝説の感(笑)がある1作目の初恋は「詩的浪漫美」(とにかく理屈抜きでムードで圧倒)で、2作目のニュームーンは「静止画像の美」(良くも悪くも)、3作目のエクリプスは「動きと構築美」(これもいい部分と悪い部分があった)という勝手な認識をもっているのだけど、今回は実に人間(動物、ばけもの笑諸々含めた)の感情描写が丁寧なのと、ハッピーで華やかな前半とホラーチックでサスペンスな雰囲気も漂う後半の対比、諸々がちゃんとお互いを打ち消し合うことなく成り立っていた。
やはり話の内容からなのか主役三人以外の描き方が浅かったような気もするが、それは逆に三人に的を絞って描写したとも言えるのかもしれない。
このシリーズは作品ごとに監督を変えてきた(キャストは一部のみ変更あり)
その作品にあった監督を選べるというメリットはあるが、シリーズトータルで観た時に何処か整合感に欠けるのがデメリット。でも、さすが今回のビルコンドン監督は経験も豊富(こちらではそんなにメジャーではないけれどグラミー賞監督〔ドリームガールズ〕でもある)で、やはり視野が広くて作品をトータルでみせる視点が高い監督さんかなと思った。一応彼の過去での代表作である「愛についてのキンゼイレポート」も去年みていたのだけど、やはりあそこでの人間の描き方の細やかさがこの作品にも出ていると感じた。
何でもない目線の投げ方や、ミリ単位の表情の違い。沈黙の中にある激しさ。台詞以外の演技がどんなに重要かということがよくわかった。映画というものは、俳優の演技と監督の演出のトータル作品だと思う(勿論、色々なスタッフや脚本家などたくさんの人が絡むものだけれど)
結局、俳優の一番の演技を引き出したり、話し合いでよりよく最初のイメージからランクアップさせたり、まさしく作品の方向性を示すのが監督の仕事であり、今回その存在を自分の色とかアクの強い個性とかではなく、トータルのバランスの自然さから感じさせてくれたのはさすがだなと思ったりした。
個人的には、1作目の初恋は特別でどんな名監督でもあれを超えることはない(ただの監督の力量の問題だけではない、あれは全ての要素でみんなの想いが結集したマジックだったのだと思う)が、それはおいておいても、このシリーズ初の前編後編作品が彼の視野の広い押し付けの少ない演出で観れるのは幸運な気がする。BDは、人間ドラマが一番ある章でもあるので、偏った演出は作品の本質まで変えてしまいかねないのだ。
そして今回はさらにジェイコブからの視点が出やすい章でもある。実際原作には、彼の視点で描かれたチャプターがBDの中にあるのだから。でも、やはり変わらず脚本はエドワードの描き方が弱いが、今回は大分監督の修正が入っていた感がある。そもそもこの章は、原作自体がそうだったのだからそっちよりになるのは然るべきなのだが、監督はエドワードのキャラクターを理解してかなり彼の心情描写をいれていた。その点でははちょっと救われた(もちろん、エドワードの暗部もきちんと描きつつも)
ロブも頑張っていた。しかしいつも以上に微妙に変わる髪形にちょっと落ち着かなかったが(笑)
でも、やはり今回は今までとは違った意味でジェイコブと狼族の存在感は大きかった。それは素直に良いと思えた。
そしてまた今回も家族/部族間の軋轢と和解がクローズアップされている。それは、初恋のころからあったテーマだけれど、シリーズを追うごとに強くなっていく。BDはその総仕上げの章でもある。そのドラマを盛り上げるために多少後半原作とは違う展開がある。映画としてはこっちの方が確かによかったかなとは思う。少なくとも意義を感じなかったニュームーンの後半の変更よりは・・・
あと注目点は音楽の使い方。地味ながらやはり上手いかも(ドリームガールズ笑)
選曲もあるが、やはり「かけ方」だと思う。音量とかはかなり気を使っているし、フェイドアウトの仕方とかどっかのようにはブツ切りにはしていない。音楽はあくまでも小道具で、映像を邪魔してはいけないのだよね・・・音楽ビデオではなく映画作品なのだから。名がしれてない人の曲でも、場面にあった曲のセレクトができていると思った。
私が一番サントラで好きだった曲。使われた場所は意外な気もしたけどちょっと嬉しかった…
今の時点の総体的な感想としては、かなり今回は作品としてのレベルは高いと思っている。派手さやケレン味はないけれど、私的にはかなり好みの部類。原作の要所はちゃんと押さえているし、少なくとも話のまとめ方や演出は前二作を超えていると思う(まだ前編のみだから確かな事はいえないけれど)
前半と後半のギャップが好みの分かれるところだと思うが、私はその対比がこの作品の一番の個性だと思う。ちなみに、私はタイトな厳しさ満載ながらも感動の後半が好きだ。もちろん、甘く華やかな前半があってこそのものだけど。
今まで見てきた方はもちろん、見たことなくて興味のあるかたは多少前作までをリサーチして、早いうちにぜひ。3/3から配られるカードは、ちょっと個人的に一週目のより楽しみ(笑)
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by aicoa
| 2012-02-29 22:37
| FILM